雑記帖[11]
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2022年8月の最後の日、山本方子さんの訃報のニュースが流れました。
韓国の国民的画家イ・ジュンソプ氏の妻で韓国名を李南徳(イ・ナムドク)とおっしゃいます。
享年101歳、東京都内のご自宅で老衰により亡くなられました。
ちょうどこちらのページで、現在国立現代美術館で展示されている「MMCAイ・ゴンヒコレクション特別展 イ・ジュンソプ」をご案内する予定でしたので驚きました。
イ・ジュンソプと方子さんを知るきっかけはほんの数年前のことでした。
弘大にあるサンサンマダンでイ・ジュンソプの牛の絵のジグソーパズルを偶然見つけたことが始まりです。そこから私のイ・ジュンソプ熱が生まれ、以前よみもののなかでもご夫妻のことを勝手に書かせていただきました。
時代に翻弄され韓国と日本で離れ離れになった夫妻。 2人をつなげる唯一の手段は200通にもおよぶ手紙でした。
家族4人が笑顔で抱き合っている様子、子供たちが海で蟹と戯れる様子、方子さんが足を怪我しお世話したときのこと…方子夫人への、家族への特別で高貴で私的で情熱的な愛がジュンソプの画と共に表現されています。
新型コロナウイルス感染拡大により、会いたい人に会えないという状況が突然起こりました。
その何十倍の長い日々をどのような精神状態で過ごされたのか…想像しただけでも胸がはりさけます。
結局再会の願いは叶わず孤独で強烈な短い一生をソウルの病院で終えた画家ジュンソプと、運命に耐え東京で2人の幼子を懸命に育て上げた方子さん。
「アゴリとアスパラ」(2人の愛称)は70年の時を越え、天で再会されました。
やっとめぐりあえたお二人…共に穏やかに過ごされることをお祈りします。
機会ございましたらご覧ください。
『ふたつの祖国、ひとつの愛 −イ・ジュンソプの妻』
2014年公開ドキュメンタリー映画 監督/酒井充子/天空+アジア映画社+太秦
『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』
2021年出版書籍 著/大貫智子/小学館
『MMCAイゴンヒコレクション特別展 イジュンソプ』
|2022年8月22日 - 2023年4月23日
|国立現代美術館 ソウル館(ソウル特別市 鐘路区 昭格洞 165)
また済州島西帰浦には1年間という短い期間でしたが、家族4人で暮らした茅葺屋根の家が復元されています。美術館やイジュンソプ通りもございます。