韓国の映画〜古山子、大東與地図
秋の夜長、今から200年ほど前の時代を描いた映画を見ました。
「古山子、大東與地図」(コサンジャ、ダイトウヨチズ)
2016年秋夕公開。「シルミド」「黒く濁る村」のカンウソク監督 チャスンウォン主演。
朝鮮で最も精巧な地図といわれる「大東與地図」。
朝鮮半島の本当の地図を作るため八道すべてをひたすら歩き続けた主人公・キムジョンホの姿を描いた作品です。
学生時代の社会を思い出して…
日本にとって地図作りで身近な存在は「伊能忠敬」。
折しも今年は没後200年に当たるそうです。
豪商でありながら「地球の大きさを知りたかった」という理由で1800年、51歳の年齢で測量の旅に…
そして17年の歳月をかけて手書きの彩色地図「大日本沿海輿地全図」を作り上げた偉人です。
そのおよそ40年後、朝鮮半島では「大東與地図」が古山子(キムジョンホの号)の手により完成されました。
当時の人にとって地図は命をつなぐものでした。
キムジョンホ自身も精巧性が欠けた地図のせいで父が山中で遭難・死亡するという悲劇に見舞われ、このことが地図作りへと突き動かしたともいえます。父が残した羅針盤は生涯の旅の伴侶になるのです。
国が地図を独占した状況の中、普通の人々が自由に使える地図を作りたいと…
完成までの間、朝鮮王朝と安東金氏の権力対立に巻き込まれながらも迎合することなく最後まで抵抗する姿も描かれています。
古山子の大東與地図は近代の測量技術を用いて作られた地図と比べても遜色がなく、最高の地図と評価され木版は龍山の国立中央博物館に収蔵されています。
いろいろな記号で工夫されています。点は1里※、山脈は山の連なりの太さで大きさと高さが分かるように…
また川の流れの緩急までも記されています。
朝鮮半島を南北12里間隔で区分し22巻の本として納め屏風のように折りたため、広げると縦6.7×3.8メートルという大きさの全国地図になります。
さらに木版で彫られているので印刷が可能です。
多くの人々に普及し、持ち運びができるようにという古山子の思いから作られた形です。
果てしのない好奇心、誰も足を踏み入れていない道に挑戦するパイオニア精神、使命感…
強い思いを持つ人は強い人間なのだと。
200年前の時代。
地図に魅了され地図に狂ったキムジョンホという人間の生きざま。
そして全国各地の臨場感あふれる圧倒的な映像美をご覧いただければと思います。
最南端の馬羅島(マラド)から最北端の白頭山(ペクトゥサン)まで1万6千kmに及ぶ距離と9か月におよぶ旅で撮影された絶景は、ひとつとしてCGで作られたものはありません。
まるで私たちもその場にいるかのような錯覚を覚え、四季折々の美しい風光を楽しむことができると思います。
最後にオープニングシーンで使われた印象的なフレーズを記します。
山の頂と思い登りゆくと更に高き頂が表れ、
川の源だと思い近づくと更に大きな流れに出会う
山と山、川と川はつながっていて果てがない
道と道もつながっていて果てがないのだ
※1里=韓国では400m